Q.ご質問
来年から学習指導要領が改訂になると聞きました。小学生・中学生の子供たちの学習内容には、どんな変化が出るのでしょうか。
A.回答
教育指導要領とは、学校で指導するように定められた内容のことをいいます。これが、小学校では来年2011年度から、中学校では再来年2012年度から改訂され、新しい学習指導要領に基づいた教育が始まります。
現在の学習指導要領は「ゆとり教育」といわれるものです。2002年から、授業数が減り、週休5日制になり、「総合的学習」という時間が新設されました。その結果、日本の子供の学力低下が指摘されるようになり、今回の改訂は、そのゆとり教育を見直すものといえます。
新指導要領で全ての主要科目に共通なことは、学習すべき内容が増えるということです。新指導要領では「総合的学習」を最大150時間減らし、算数が142時間、数学が70時間、理科は小学校で55時間、中学校で95時間増えます。この理系科目の増加に伴って、年間に授業を受ける全体の時間数も増えることになります。
それを聞くと、来年からの勉強は覚悟しなくては!とお思いになるかもしれませんが、実は新しい教育指導要領の準備は既に始まっています。来年になって、突然、指導要領を増やすと、現在の小中学生には未習内容が生じてしまいます。そのため、日本の学校・日本人学校では、新指導要領にあわせて学習内容を少しずつ増やしており、今はその移行期間になっています。
中でも注目される教科は、小中学校で標準授業時数が18%増加となる算数・数学、23%増加となる理科です。ゆとり教育の時代に小学校の教科書から消えていた「台形の面積」や「反比例」は復活し、円周率も「3」ではなく「3.14」で計算することになります。
また、英語の強化も注目されています。新指導要領により、小5から、週1時間の外国語活動(英語の学習)が必修となります。より年齢の低いうちから外国語の定着をはかることがねらいです。また、中学校では英語の授業数が週3時間から週4時間へと増加し、学習する単語数が「900語程度まで」から「1,200語程度」へと増加します。
国際学力テストの結果では、日本の子供たちの学力順位が年々落ちていることもあり、今回の改訂による学習内容の増加には賛成意見がとても多いです。しかし、大変になるのは子供たち。優秀な子供を育てることも必要ですが、この改訂により子供たちにはどんな影響が出るのか?注視する必要がありそうです。
(フリーペーパー「友」 2010年11月号掲載)